建築への扉

創造と想像

2007年12月05日(水)

ものを作るという行為の対極には破壊あるいは消滅という事象がある。建築を創る環境が自由になればなるほど、創り手の責任は大きくなっていく。こうしたいではなく、そのものがどうあるべきかを考え、自分に何ができるかを問うところから、創るという行為は始まる。

教育や福祉の分野で、その設計にかかわる機会を得るということは、これからの教育、これからの福祉について思惟することであり、社会を考えるということにほかならない。建築は物理的にはものであるが、その中であるいはその周りで様々な人間模様が繰りひろげられることを考える時、そのものはそれが個人の住宅であれ、公共の建築であれ、単にものとしてでなく、社会的な空間として存在する。人とともに生き、人とともに成長し、でき得れば人の幸せにいくらかでも寄与することのできる建築、笑顔の似合う建築…。

そのためには例えば、障害をもつということを対岸にいて考えるのではなく、自らの明日に重ねて思惟することが必要だ。社会のあり方をより真剣に考えていくことが求められるのである。創造と想像、この二つの力を与えられた条件にかけ合わせて、いかにあるべきかの答えを導き出すことこそ、これからの創り手の使命であり、建築が社会に発するメッセージではないだろうか。そして、おそらくは無限にある答えの中から、たった一つを選び出すことが私自身の表現なのである。