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理想の緩和ケア病床 PartⅡ

2015年09月25日(金)

究極の個室的多床室をめざして

私達は緩和ケア病床における多床室のあり方について議論した。

看護サイドより、満足のいくケアを提供するためには全室個室という要望が出されたが、

一方で差額ベッドの問題もあり、地域に根差した診療所としての役割を考えると

差額ベッド料金がかからない多床室も必要だとの結論に達したからである。

従来型の4床室では尊厳を持ってその方らしく過ごしていただくという主旨に反する。

寄り添うご家族にも配慮したい。

思案の末、コーナー部分を活かした3床室を提案した。

各ベッドがそれぞれバルコニーに面した窓を持つ画期的なプランだ。

通常、多床室の間仕切りはメディカルカーテンだが、出入口部分を残して間仕切り壁を設けた。

洗面はそれぞれの専用とし、トイレのみを共用とした。

従来型の4床室では得られなかった開放感と独立性が保たれた多床室が実現した。

開院以来、この究極の多床室は「患者さんやご家族の評判がすこぶるよい」とのことだ。

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理想の緩和ケア病床

2015年08月11日(火)

最期まで自分らしく・・・西村医院有床診療所における私達のチャレンジをお話します。

~プロローグ~

積極的な治療の時期を経て、主治医から退院を勧められたMさん57歳。
手術、抗がん剤、一縷の望みをつないで耐えてきた治療、それも終わりか・・・。
療養病床を持つ病院や評判のホスピス等、いくつかの選択肢が示される中でMさんは考えた。
「できるものなら住み慣れた我が家で過ごしたい」「しかしそんなことが可能だろうか」
「家族の精神的肉体的負担は相当なものだろう」「これ以上迷惑をかけるのは忍びない」
「今は病状が落ち着いているが急変したら?」「救急車を呼ぶことになるだろうか」・・・様々な不安が頭をよぎる。
65歳未満の末期癌患者の受入先は思いの他脆弱だ。在宅医療に踏み切るのもハードルが高い。
簡単には切り出せない「家に帰る」の一言・・・しばらく悩んだ末、やっとの思いで「家に帰れたらなぁ」と小さくつぶやいたMさん。
「そうねぇ家に帰れたらいいわねぇ」消え入りそうな声で相槌を打つ妻。

しかし、長年在宅医療に取組んでこられたN院長は「ほんの少し条件が整えば、ほとんどのケースで在宅医療は可能だ」と力強く言う。
在宅医療の本質は適切な医療を提供しQOL(生活の質)を高めることにある。住み慣れた自宅で家族と交流しながら“生活”できること、患者の意思を最大限に尊重した介護ができることが在宅医療のメリットだ。痛みや苦痛を和らげる緩和ケアを受けることもできる。
一方で、過大になりがちな家族の介護負担、病状悪化急変時の対応への不安、これら身体的精神的負担を軽減し不安を解消するためのシステムづくり、その一環として緩和ケア専門の有床診療所整備計画はスタートした。

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心が和む手作り時計

2015年07月31日(金)

建物が竣工しいよいよ引渡し、喜びと共に一抹の寂しさを感じる瞬間です。
「さぁ、これからしっかり幸せづくりをしてね!」そんな気持ちを込めて竣工祝の品を選びます。
建物のスタイルや用途に応じて最適なものをと探す中でいつのまにか定番となったのがこの時計。
小さなお子様のいる家庭やほっこり和みたい空間には本当にオススメ!です。

20150811180630手作り感たっぷり、小枝を上手に使い、小鳥やリスが楽しげ、日本製のしっかりしたムーブメントに安心感があるこの時計は神戸市北区の工房“かぜまがり村”の村里さんが1点1点心を込めて制作されています。


西脇の家

2014年03月12日(水)

「実家の銭湯を定年後の住まいにしたい」と相談を受けたのは2年前の春でした。

銭湯は使われないまま約十年を経て老朽化が進んでいましたが、約半世紀前のこの建物は吟味された材料で手の込んだ職人の手仕事・・・建替えてしまうには惜しい普請でした。

ご両親との想い出が詰まっているこの建物を生かしましょう!方向性は一致して
①全体改修案②減築改修案を提示、検討していただくことになりました。

外観・・・煙突がそびえています

外観・・・煙突がそびえています

浴場・・・高天井のトップライトとランマから陽光

浴場・・・高天井のトップライトとランマから陽光

脱衣室・・・出入口、番台、下足箱

脱衣室・・・出入口、番台、下足箱

昨年の春、②の減築案でいくことが決まり、設計がスタートしました。

改修では大工棟梁の腕と熱意は特に重要です。
㈱谷口建設(山崎町)の専務さんと棟梁に現場を確認してもらいました。
「なかなかいい仕事してるなぁ、おもしろそうや」・・・やる気満々の棟梁。

Kさんご夫妻もすっかり棟梁と意気投合したようで、
施工は㈱谷口建設にお願いすることになりました。
約1ヵ月の予算調整の後、まず、浴場、煙突、ボイラー室の解体が始まりました。
周囲はかなり建て込んでおり、煙突の解体には特に気を使いましたが、
ご近所の皆さんから「業者さんの近隣への気配りが大変素晴らしかった!」
とお褒めをいただく仕事ぶり・・・(昇建設の藤井さんありがとうございました。)
そして、秋も深まった頃より改修工事がスタート。

構造体

  • 屋根を軽くして耐震性能を改善します。
    入母屋の瓦と土をおろしガルバリウム鋼板に葺き替えました。
  • 柱や壁の補強をします。
    腐朽した柱を入替え、傾きを修正し、補強柱や筋交いを入れました。
  • 下屋を新設します。
    配置上、西向きとなった庭に対して深い下屋庇を設けました。

内部は古いものをできるだけ生かしきろう!当初の目論見どおりの出来栄えとなりました。

格天井を生かし照明を嵌め込んだ居間

格天井を生かし照明を嵌め込んだ居間

脱衣棚を再利用したTV棚と建具を利用したパソコンコーナー

脱衣棚を再利用したTV棚と
建具を利用したパソコンコーナー

 

 

脱衣棚や棚受けを再利用した台所収納

脱衣棚や棚受けを再利用した台所収納

小屋裏を現しにした寝室

小屋裏を現しにした寝室

既存の建具を生かした縁側

既存の建具を生かした縁側

細工障子を再利用した階段室

細工障子を再利用した階段室

緩勾配に付け替えて上りやすくなった階段

緩勾配に付け替えて上りやすくなった
階段

障子と畳を入れ替えて壁を塗り替えた和室の続き間

障子と畳を入れ替えて壁を塗り替えた
和室の続き間

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路地を入った玄関・・・漆喰を塗替え嘗ての銭湯入口には大和塀を設けて坪庭としました。

西側の庭に植えるアオダモの樹・・・山取りの自然な樹形が美しい落葉樹・・・夏は陽を遮り、冬は陽光を!

西側の庭に植えるアオダモの樹・・・山取りの自然な樹形が美しい落葉樹・・・夏は陽を遮り、冬は陽光を!

庭は最小限の植栽のみ行ない、趣味のガーデニングで作り上げていく。

床などの塗装は毎週末通いながら少しずつ仕上ていく とKさん

「本当にいい家」とは何だろうと自問自答することの多い今日この頃ですが、
この家のように手間をかけ慈しんで住み継がれていく家こそ「いい家」に違いありません。

引渡しの日、Kさんが誰にともなくつぶやかれた「親父が生きていたらきっと喜んでくれただろうなぁ」という言葉が今も輝いて耳に残っています。


家と庭のいい関係・・・東加古川の家

2013年10月29日(火)

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竣工1年目の検査で東加古川の家を訪問しました。

地域の在宅介護を支える多忙な医師ご夫妻の住まい。
1年を経て、
少し落ち着いた風情の樹木や山野草が季節を奏で、
せせらぎではメダカやアメンボウが楽しそうでした。

家と庭のいい関係が年月を経てさらに深まることを願っています。