2008年09月30日(火)
増築や改修では、歳月を生き抜いてきた建物が目の前にあり、その建物を創った人やそこで過ごした人々の想いが感じられる。
私達はそんな声に耳を澄まし、寄り添いながら、「よりよくつくる」ための方法を模索する。
京都御所はもともと天皇家のお住まいであり、京都御苑は広大なお庭である。宮内庁京都事務所はその庭の一画にある。京都御所等の管理を行い、皇室と皇室の活動について国民の理解を深める重要な施策を担うオフィスであり、日本の皇室の伝統に惹かれて訪れる国内外の人々のための参観受付の窓口がある。事務所内には貴賓室があり、天皇皇后両陛下をはじめ皇族の方々が年に数度はお見えになるのだという。
そのような場所性と様々な要望に応えるため、特に考えたのは以下の3点であった。
◆既存建物のデザインを活かす。
◆寝殿造りの空間構成の手法を取り入れる。
◆御所の杜に調和する奥床しい清楚な建物とする。
伝統的な日本建築の手法である「透ける」空間構成は、高温多湿の土地に、やわらかな陽射しと爽やかな風を運んで、環境対策にも一役買ってくれそうだ。「先人の智恵に学ぶこと」「想いを大切にすること」それが私達の作法である。