2014年03月12日(水)
「実家の銭湯を定年後の住まいにしたい」と相談を受けたのは2年前の春でした。
銭湯は使われないまま約十年を経て老朽化が進んでいましたが、約半世紀前のこの建物は吟味された材料で手の込んだ職人の手仕事・・・建替えてしまうには惜しい普請でした。
ご両親との想い出が詰まっているこの建物を生かしましょう!方向性は一致して
①全体改修案②減築改修案を提示、検討していただくことになりました。
昨年の春、②の減築案でいくことが決まり、設計がスタートしました。
改修では大工棟梁の腕と熱意は特に重要です。
㈱谷口建設(山崎町)の専務さんと棟梁に現場を確認してもらいました。
「なかなかいい仕事してるなぁ、おもしろそうや」・・・やる気満々の棟梁。
Kさんご夫妻もすっかり棟梁と意気投合したようで、
施工は㈱谷口建設にお願いすることになりました。
約1ヵ月の予算調整の後、まず、浴場、煙突、ボイラー室の解体が始まりました。
周囲はかなり建て込んでおり、煙突の解体には特に気を使いましたが、
ご近所の皆さんから「業者さんの近隣への気配りが大変素晴らしかった!」
とお褒めをいただく仕事ぶり・・・(昇建設の藤井さんありがとうございました。)
そして、秋も深まった頃より改修工事がスタート。
構造体
- 屋根を軽くして耐震性能を改善します。
入母屋の瓦と土をおろしガルバリウム鋼板に葺き替えました。 - 柱や壁の補強をします。
腐朽した柱を入替え、傾きを修正し、補強柱や筋交いを入れました。 - 下屋を新設します。
配置上、西向きとなった庭に対して深い下屋庇を設けました。
内部は古いものをできるだけ生かしきろう!当初の目論見どおりの出来栄えとなりました。
路地を入った玄関・・・漆喰を塗替え嘗ての銭湯入口には大和塀を設けて坪庭としました。
西側の庭に植えるアオダモの樹・・・山取りの自然な樹形が美しい落葉樹・・・夏は陽を遮り、冬は陽光を!
庭は最小限の植栽のみ行ない、趣味のガーデニングで作り上げていく。
床などの塗装は毎週末通いながら少しずつ仕上ていく とKさん
「本当にいい家」とは何だろうと自問自答することの多い今日この頃ですが、
この家のように手間をかけ慈しんで住み継がれていく家こそ「いい家」に違いありません。
引渡しの日、Kさんが誰にともなくつぶやかれた「親父が生きていたらきっと喜んでくれただろうなぁ」という言葉が今も輝いて耳に残っています。