2015年08月11日(火)
最期まで自分らしく・・・西村医院有床診療所における私達のチャレンジをお話します。
~プロローグ~
積極的な治療の時期を経て、主治医から退院を勧められたMさん57歳。
手術、抗がん剤、一縷の望みをつないで耐えてきた治療、それも終わりか・・・。
療養病床を持つ病院や評判のホスピス等、いくつかの選択肢が示される中でMさんは考えた。
「できるものなら住み慣れた我が家で過ごしたい」「しかしそんなことが可能だろうか」
「家族の精神的肉体的負担は相当なものだろう」「これ以上迷惑をかけるのは忍びない」
「今は病状が落ち着いているが急変したら?」「救急車を呼ぶことになるだろうか」・・・様々な不安が頭をよぎる。
65歳未満の末期癌患者の受入先は思いの他脆弱だ。在宅医療に踏み切るのもハードルが高い。
簡単には切り出せない「家に帰る」の一言・・・しばらく悩んだ末、やっとの思いで「家に帰れたらなぁ」と小さくつぶやいたMさん。
「そうねぇ家に帰れたらいいわねぇ」消え入りそうな声で相槌を打つ妻。
しかし、長年在宅医療に取組んでこられたN院長は「ほんの少し条件が整えば、ほとんどのケースで在宅医療は可能だ」と力強く言う。
在宅医療の本質は適切な医療を提供しQOL(生活の質)を高めることにある。住み慣れた自宅で家族と交流しながら“生活”できること、患者の意思を最大限に尊重した介護ができることが在宅医療のメリットだ。痛みや苦痛を和らげる緩和ケアを受けることもできる。
一方で、過大になりがちな家族の介護負担、病状悪化急変時の対応への不安、これら身体的精神的負担を軽減し不安を解消するためのシステムづくり、その一環として緩和ケア専門の有床診療所整備計画はスタートした。